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こたろう博物学研究所
探訪記録:200008278

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矢筈山・綱附森(高知県物部村・徳島県東祖谷山村)【平成12年(2000)8月27日】


 朝5:00に起床。旅館のお婆ちゃんは既に食事の準備を済ませてくれている。身支度を整えた後、早速戴くことにする。玄関脇の茶の間に朝食は並んでいた。生卵、味噌汁、味付け海苔、漬物、ちくわの穴に胡瓜を詰め込んだものなど、これも先日の夕食同様、素朴なものであるが美味い。
 山登りということを伝えていたので、お茶もヤカンいっぱいに用意してくれていた。有り難くPETボトルに詰める。

 宿泊代(6000円+ビール500円)の精算を終え、宿のもてなしの御礼を述べた後、6:00過ぎに矢筈峠へ向けて出発。幅狭の道を物部川沿いに上る。途中の集落・五王堂から左に逸れて笹渓谷沿いに車を走らせる。やがて笹渓谷温泉の建屋が見える。帰りがけにはここで一風呂浴びようと思いながら、先へと進む。段々と道幅も狭く感じるようになり、やがて干そうが途切れる。我が愛車は時折腹を擦って悲しい悲鳴をあげる。

 大栃を出て小一時間走って、やっとの思いで矢筈峠に着く。距離は高々24kmしかないのだが、知らぬ道ともあってえらく時間がかかってしまった。
 矢筈峠は別名アリラン峠ともいう。五王堂から笹にかけての道路工事に従事していた韓国人労働者達が故郷の景色に似ていると懐かしんだことからその別名がつけられたという。

 矢筈山登山口の脇に車を停め、登山準備に移る。標高は1250m。早朝ともあって空気がひんやりとして気持ちがいい。綱附森への登山を前に、準備運動がてらに登ることもあって、いつもの重装備(そのほとんどは食物・飲料)の荷物は車に残し、カメラと水程度の軽装備で早速登り始める。時刻は07:00。

 登山口からしばらくは水平な道が続き、すぐにブナの美林に至る。登山道は非常に整備が行き届いていて、歩きやすい。20〜30分ほど歩くと低木帯に移り、間もなく笹原へと変わり眺望が開ける。道端にはタカネオトギリ、シコクフウロ、ツリガネニンジンなど夏の花々が可憐な姿を見せる。
 45分ほどで美しい笹尾根に到着。思ったよりも広々とした空間が西方向へと広がっている。辺り一面は、背丈が低くツヤツヤとした葉のミヤマクマザサで覆われ、朝露に濡れて光っている。

 「京柱峠へ」と記された標識のところで折り返して矢筈山山頂へ。7:50に山頂到着。ここからは360°のパノラマの風景が広がる。晴天の日の早朝という好コンディションも手伝って、雲一つ無く、全方向とも遠くまで山の景観が見渡せる。西には小桧曽山へと続く笹尾根が広がり、その向こうに5基のアンテナを携えた梶ヶ森の姿が見える。そしてその遥か向こうには雲海がたちこめ、その先に石鎚〜東赤石の山々までが見通せる。北から東に目をやれば天狗塚や三嶺、そして今から向かおうとしている綱附森などの三嶺山塊が雄々しい姿を見せている。剣山もほんの少しながら姿を覗かせている。実に爽快だ。
 山頂付近はシコクフウロ・ツリガネニンジンのお花畑にもなっていて心がなごむ。実にいい山である。

 ゆっくりしたいところであるのだが、11:00には綱附森に到着しなければならない。というのも、稲葉さんの山友である芦刈さん夫妻が四国百山最後の山制覇ということで、11:00に綱附森到着予定だからだ。山頂にて祝杯で迎えようという算段が今回の登山にはあるのだ。美しい景色に名残惜しさを感じながらも約15分の山頂滞在後、8:05に下山に移る。

 「こんなにいい山なのに、思ったよりも人が登らんのじゃね」などと話しながら下山していたのだが、途中、10人弱の登山グループとすれ違う。やはり、この眺望の良さはよく知られているのだろう。

 8:35に再び峠へと戻ってくる。車をやや東のトイレ前の広場まで移動した後、今度は準備をしっかりとして綱附森へと歩き始める。時刻は8:47。

 林道を5分ほど歩くとだだっ広い広場に着く。広場、そして先へと続く道は共に鎖で封鎖されている。駐車するには好適地なのに封鎖するとは勿体無い。
 そこの左側より綱附森への登山道が続いている。最初しばらくは急坂が続く。矢筈山に登ってきたせいもあって、足腰にはちょっと堪えるものがあるが、それよりも何よりも朝露に濡れた背丈の高い笹のほうが厄介である。半ズボンにスパッツ着用といういでたちで登ってきたのだが、忽ちにして下半身はびっしょりと濡れてしまう。靴も靴下もズブズブ状態である。

 立ち木の中に続く登山道を、登っては下りを3回ほど繰り返す。小一時間ほど歩くとやっと笹原に出る。小高いピークは安野尾山という名前も持っているようだが定かではない。西手には先程登った矢筈山がどっしりとした山容を示している。東手には綱附森へと笹原が延々と続く。いつもは大好きな笹道であるが、今回ばかりは鬱陶しくて堪らない。相変わらず笹の葉はたっぷりと水分を携えている。しかも腰高の背丈である。歩くたびにその水分は疲れた身体に絡み付いてくる。「誰かもう少し刈り込んでくれよ」と心の中で訴えの悲鳴を上げてしまう。
 それでも何とか踏ん張りながら歩き続ける。晴天の下での笹原歩きは蒸し暑くてたまらないのだが、この登山道は所々にオアシスのように林があるのが有り難い。林の中で適度に休みをとり、濡れた衣服類を絞る。
 やがて左手に天狗塚から牛の背へ広がるどっしりとした山塊が現われる。その美しい姿を眺めると少しは疲れが癒される思いである。

 10:47、歩くこと2時間ぴったりで綱附森山頂に到着。ここも360°パノラマの風景が待っていた。辺りを遮るものは何もない。三嶺・天狗塚・白髪山などが手の届きそうな位置にある。南に目をやれば、前日泊っていた大栃の集落と永瀬ダム湖の姿も見える。
 早速荷物を降ろし、北端の肩のところまで歩き、芦刈さん夫妻の姿を確認しに行く。しかし、縦走路のどこにもそれらしき姿は見えない。百山制覇の瞬間を撮影しようとしばらくその場所で構えるが、一向に到着の気配がない。仕方ないので、まずは我々の登頂のための祝杯をあげる。昨日土佐山田町で調達した氷の保冷効果は抜群であった。ギンギンに冷えたビールは乾いた身体に心地よく染み渡る。美しい風景に包まれていることもあって気分は格別だ。

 30分ほど経過すると、ちらほらと登山者の姿が現われはじめた。我々と同様、矢筈峠から登ってきたという南国市からの親子3人連れはいずれも健脚。中でも息子さんは矢筈峠からノンストップで90分でやってきたらしい。光石登山口方面からは夫婦連れが2組。芦刈さん夫妻と出会わなかったかどうかを確認するが、どうも出会ってない様子。そうこうしながら昼時になったので取り敢えず昼食を摂ることにする。そこへ単独行の推定年齢30〜40歳の青年(壮年?)が登頂してきた。光石〜天狗塚〜綱附森を5時間で歩いて来たという。彼は芦刈さん夫妻とほぼ同時刻7:00前後に光石から登り始めたと云う。となると、当初の予定では5:00頃登山開始で11:00綱附森に到着ということであったから2時間遅れである。「13:00頃まで待てば到着しますかねぇ」という問い掛けに、青年はきっぱりと「まず無理でしょう」と答える。

 確かに彼の回答は正解であった。13:00まで待ってはみたものの、縦走路にさえも夫妻の姿は確認することができなかった。止む無く三角点の標柱に伝言メモを貼り付けて13:05、下山に移る。ひょっとしたら...と淡い期待をしつつ、後ろを振り返りながらゆっくりと下りていくが、段々と綱附森の姿は遠のいていくばかりである。(後日談ではあるが、結局芦刈さん夫妻は13:30過ぎに山頂に着いたとのこと。そうであればもう少し待てば良かったと思ってしまう。所詮結果論ではあるが。)

 14:40、矢筈峠到着。一息ついた後、林道を下り、笹渓谷温泉で湯に浸かる。良質の硫黄泉で、まるで火山地の温泉に来たと錯覚するように心地よい硫黄臭いが浴室内に立ち込めている。渓谷のせせらぎをながめながら檜造りの浴槽に浸かっていると本当に落ち着いた気分になれる。露天風呂さながらである。
 このまま時間を忘れてゆっくりと浸かっていたかったのだが、松山までの帰路のことを考えるとそうそうゆっくりしているわけにもいかない。30分ほどで切り上げ、ジャズのメロディの流れる建屋の中で湯上がり後の一服をする。ビールを飲みたい気分だが、車の運転があるのでぐっと我慢して、その代わりに無料の薬草茶を飲む。

 疲れも癒え、16:30頃、松山への帰路に就く。来た道を引き返し、途中土佐山田町で南国IC方面へのショートカット道へと右折。国道33号線にて帰ろうとも思ったが、高速道路の方が圧倒的に短時間で楽のような気がしたので、迷わず高速道を選んでしまう。
 途中、石鎚山SAにてお土産購入がてら一時停泊し、19:30に松山市の自宅に到着。

 愛媛にこだわり続けて、方々の山もめぐってきたのだが、今回のようにたまには県外に出てみるのも悪くないものだ。特に今回登った山はいずれも眺望が利き、愛媛とは違った味わいがあった。一度この味を知ってしまうと、ついつい止められなくなってしまいそうだが、まずは愛媛全山を目指すという初志を貫徹せねばならない。一層、山への思い入れが強まった登山行であった。



【同行者】稲葉さん
【コースタイム】
[矢筈山往復]物部村大栃−(車60分)−矢筈峠−(50分)−矢筈山山頂−(30分)−矢筈峠
[綱附森往復]矢筈峠−(120分)−綱附森−(90分)−矢筈峠
 

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