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こたろう博物学研究所
探訪記録:20000702

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瓶ヶ森・子持権現山・伊吹山登山【平成12年(2000)7月2日】


 久々に晴れ上がった休日になる模様。朝4:30に目覚め、山行きの支度をする。
 犬達の散歩を済ませ、5:15分頃、松山市を出発。岩黒山・筒上山・手箱山の縦走を目論み、国道33号線を進む。途中、朝食等を調達するため、砥部町のコンビニに立ち寄る。お客の中に、白装束を身に纏った夫婦連れの姿がある。そうか今日はお山開きの2日目。石鎚界隈は多くの人出があるのだろうなと思いながらも、2日目だからそうでもないのかな...反駁したりもする。

 三坂峠はそれほどの通行量でもない。スムースに車は流れる。
 久万町の市街地から左折して、古岩屋経由で美川・面河へと抜ける。県道12号線に入ってから、観光バス、マイクロバス、ワゴン車などがやたらと多くなってくる。「やっぱり今日は人が溢れかえってるんだろうな...」と静かな山行を期待していたのに、石鎚界隈を目的地に選んでしまったことを悔やむ思いである。

 7:20、土小屋に到着。予想通り、駐車場は既に大型バス等で埋め尽くされ、辺りは白装束の人々で溢れている。瓶ヶ森林道をやや進んだところの路側に一旦車を停め、土小屋まで引き返してみたものの、どうも人の多さに酔ってしまいそうになる。
 石鎚神社遥拝殿下には赤十字の救急車やテントなどが張られていたり、山岳パトロールのボランティアチームがミーティングをしていたりで、物々しい様子である。

 ひとまず、石鎚の姿でも拝んでおこうかとスカイライン沿いの遊歩道をやや下る。北方に目をやると、気持ちいいくらいに澄んだ空気の向こうに石鎚山が神々しい姿を見せている。
 僕がこの場所に来るときはどういうわけか何時も雨降りあるいは深い霧に覆われていた。だから、まともに石鎚の姿を目にしたことが一度もなかった。そういった意味で、初めて見えた石鎚の美しい姿には非常に感動を覚えてしまった。その御礼も兼ねて、予定変更して石鎚を目指そうと一瞬思ってしまったが、やはり「静かな山行」という初志を貫徹しようと、瓶ヶ森方面へと足を運ぶことにした。

 瓶ヶ森林道を東に進み始めてすぐ、右手に碑が立っているのが目に留まる。「加茂川の源」と刻まれている。副碑には「水の都西条の母なる川 加茂川を源とするうちぬきを市民の誇りとし、その恵みに感謝の意をこめて、今を永く保全されることを願い、この碑を建立する。 平成9年11月吉日 西条市長 伊藤宏太郎」と記されている。水を汲んで飲もうとも思ったが水量は余りない。この場所よりやや東のところには、沢に繋がれたホースから勢い良く水が溢れているので、そちらを口に含む。冷たくてとても清々しい。

 次によさこい峠で一時停車して、岩黒山・筒上山・手箱山の姿を楽しむ。
 ここから伊吹山への登山道が続いているので、まずここから登ろうかとも思ったが、やはり東から順番に攻めようと思い直し、再び車を走らせる。

 途中、「瓶ヶ森自然休養林案内図」の看板のところで停車し、石鎚方面に目をやる。山頂付近に若干の雲がかかっている他は、青空が広がり、成就社付近から手箱山に至る迄の山々が全体的に見渡せる。東方には子持権現山瓶ヶ森の姿も確認でき、絶好の眺望スポットである。

 景色を堪能して、再び車を走らせる。途中、伊吹山への登山口を2箇所確認し、後からどちらかの登山口から登ろうと心に決めるや否や、シラザ峠に着いた。「山荘しらさ」の駐車場に車を停め、笹原越しの東方の山々を眺める。
 全く寄り道ばかりしているものだから、時刻は7:55分を回ろうとしている。

 8:06、瓶ヶ森の駐車場に着いた。既に何台かの車が停まっており、もう既に下山した人達もいる。こちらの山も白装束に身を纏った石鎚講信者の姿が散見される。「何故瓶ヶ森に?」という素朴な疑問が涌いてくる。(これは後程、男山に着いてからわかることになるのだが....)

 早速、登山準備を整え、8:15、駐車場突き当たりの登山口より登山開始。一旦林道まで出て、公衆便所の横に立つ「瓶ヶ森自然休養林(氷見二千石原)」などの看板を一通り眺めるてから、8:20再出発。石畳の登山道の脇には、昭和49年10月23日に高知営林局により立てられた「瓶ヶ森自然休養林」の看板がある。

 3分(100m)ほど歩くと、男山経由女山瓶ヶ森)−氷見二千石原の分岐に着く。「現在地−(580m)−男山−(540m)−女山、現在地−(820m)−(560m)−女山」と行程が示されている。さて、どちらのコースを採ろうかと一瞬思案したが、よく考えると昼食の水を未だ調達していない。そう言えば、瓶ヶ森には「瓶壷」と呼ばれる清らかな水が湧き出る場所があったはずだ。右には折れず、真っ直ぐ氷見二千石原方面を目指す。

 更に1分ほど進むと氷見二千石原方面と白石荘方面への分岐に差し掛かる。ここも右に折れずに真っ直ぐ進んでいく。辺りを見渡すと、笹原の中に所々シラベが林立しており、所々白骨が立っている。そしてその遥か向こうに神々しい石鎚の姿が見える。

 8:28、「瓶壷経由西之川/白石小屋第2キャンプ場」の標識の立つ分岐に着く。目的とする水を得るため、西之川の方向へ下っていく。途中の木蔭で、白装束の御一行が記念撮影をしている。「シャッターを押しましょうか」と声をかけようとした矢先、さっさと撮り終えて再び歩き出そうとするので声をかけそびれた。仕方がないので、「こんにちわ」の挨拶だけで済ますことにする。すると、「お疲れさま」との声を返してくる。「お気遣いは有り難いが、今から登るんだけどなぁ....。ただ水を汲みに来ただけだから、まだ疲れてないよ」と思いながらも「いえいえ」と言うしかない。

 瓶壷はすぐそこにあった。分岐から約5分の場所である。柄杓なども用意されていて有り難い。岩場から湧き出た水だろうと思っていたが、意外にも笹原の中の小谷であった。水面の表面には時折、笹の枯葉が漂っている。しかし、流石に1700〜1800mの高地に流れる水。透明感がある。そして冷たくて気持ちが良い。柄杓で水を汲んで喉を潤し、PETボトルに水を詰める。

 来た道を折り返し、8:42、再び分岐に戻る。そして、氷見二千石原の笹原の中に続く道を東の方向に進んでいく。本で写真を見たときに持ったイメージよりも、相当広い笹原であった。実に爽快な眺めであるが、日が昇るにつれてムーンとした湿気が蒸散してきて蒸し暑くてたまらない。ほぼ無風状態なので、この熱気にはまいってしまう。途中、「鎖道経由男山」への分岐があったが、瓶ヶ森ヒュッテ方面経由のコースを取ることにする。

 だだっ広い笹原が続く。勾配は殆ど無いので、その意味では楽なのだが、とにかく暑い。

 8:48、ヒュッテ前着。ヒュッテの脇を歩いていると、かすかなせせらぎの音が耳に入ってきた。水量は然程多くはないが、「わざわざ瓶壷まで水を汲みに行かなくともここで水を調達できたなぁ...」と思ってしまう。

 ここからは割合急な坂道となる。丸太で階段状に整備しているので、歩きやすいといえば歩きやすい。時折、横目で氷見二千石原の風景を眺めながら、ゆっくりとした足取りで登っていく。8:56、坂の途中で一休み。煙草を吸いながら遠景を楽しむ。西方向には成就社辺りから石鎚にかけての山稜が見渡せる。

 9:09、思ったよりも早く瓶ヶ森(女山)山頂に着いた。先程まで日が照り、むせ返るほど暑かったのに、山の南側が深い霧に包まれていて、日差しも遮ってしまっている。吹き出た汗で肌にくっついたシャツが、すぐに肌寒く感じるようになる。リュックから折り畳み椅子を取り出し、霧が晴れるのを待つことにする。静まり返った山頂には他の登山者は居ない。先程、瓶ヶ森駐車場で見た多くの登山者達は一体どこへ行ったのだろうと首をかしげてしまう。まぁ、「静かな山行」という当初の目的が果たせたわけだから悪くはない。

 山頂には「石土山大権現女入道」と書かれた石積みの祠が建つ。脇には「平成2年7月吉日 西条市氷見 工藤明」と記された碑が建っている。「伊予の高嶺」と称される石鎚の山々には山岳信仰が根付いていることを強く感じさせる。

 さて、待てど暮らせど一向に南側の霧は晴れない。北東方向に扇山(1392.4m)を見下ろすことはできるのだが、ほんの目と鼻の先にある西黒森(1861m)の姿は全く見えない。まぁ気長に待とうと煙草を吸っていると、遠く山裾の方から太鼓を打ち鳴らす音が聞こえてくる。「麓の石鎚神社でもさぞかしお山開き大祭で賑わってることだろうな」と思っていると、西の方向から法螺の音が鳴り響いてくる。石鎚山からにしては音が大き過ぎる。男山からか。そう言えば、石鎚神は男神。今日のようなお山開きの日は、「案外男山の方が信仰の対象として持て囃されるのかもしれないな」と考える。

 霧が晴れるまで..と待つこと20分。一瞬、西黒森の裾が白く霞んで見えたものの、梅雨の合間ということもあって、分厚い霧はそう簡単に消え失せてくれそうにない。法螺の音に誘われて、9:30、男山目指して進むことにする。

 平坦な尾根道を下りて行くと、本日初めての「一般登山者」のグループ8名とすれ違う。その後もポツリポツリと登ってくる人とすれ違う。その度に道を譲りながらゆっくりと進んでいく。南面は相変わらず深い霧。その垣間で、瓶ヶ森南面の大崩落跡が目に留まる。噂には聞いていたが、かなり酷い。これでは通行再開にもまだ時間がかかりそうだ。(とりあえず、崩落斜面に元通りの道らしきものを作ってはいるものの、強度的に心許ない感じである。)

 9:41、10分少々で男山に着いた。そこでは、修験者・石鎚講信者の敬謙な儀式が執り行われていた。儀式の邪魔をしてはならぬと、物音を立てないように気を遣いながら成り行きを眺める。読経が絶え間無く繰り返される。山伏の格好をした人が祠に安置していた本尊を抱え、信者の背中や胸に押しつけている。何やら厄祓いというか悪魔祓いといった意味合いのようだ。「お山開き」で人が多くて嫌だなぁ...と思っていたが、このような儀式を目にすると、普段の登山では得られない風景を見ることが出来、非常にラッキーだったと感じてしまうのだから現金なものだ。

 9:48、下山開始。ここからの下りでは、信者・一般登山者ともに非常に多くの人とすれ違う。なるほど、先程女山で考えていた通り、瓶ヶ森では男山こそが石鎚お山開き大祭のメーンの存在のようだ。

 10分も歩けば駐車場に着いた。時刻は9:58。駐車場には多くの車、大型バスが次々と入り込んで来ている。駐車場脇のベンチで腰掛けてメモを整理していると、祈りを捧げ終えた信者達が下山してくる姿が目に留まった。駐車場に辿りつくと、くるっと振り返り、登山路に向かって首(こうべ)を垂れて再び祈りを捧げている。あらためて今自分が居る場所が「信仰の場」「霊峰」であることを知らされる思いがした。
 

 まだ時刻は10:20。引き続き、子持権現山を目指すことにする。瓶ヶ森駐車場に車を停めておき、ここから歩こうと思い歩き始めたものの、思い直して最寄りのところまで車で行くことにした。子持権現登山口には既に数台の車が駐車してあり、停めるスペース無し。一段上の展望の利く広場のところに車を停めて、10:24、徒歩縦走路を成すなだらかなスロープを下り始める。

 10:27、子持権現山の登山口に着く。ここから岩峰へと続く登山路脇の自然林が美しい。こんな調子で登山道が続くならば気分も晴々とするなぁ...と思っていたら、突如目の前に切り立った岩塊、そして真っ直ぐに上方へと伸びる1本の鎖が出現する。道の脇には老婆と子供が「私らは到底登れんよ」といった面持ちで座り込んでいる。距離は然程でもなさそうだが、登りつめるには相当体力勝負を余儀なくされそうだ。鎖を辿りながら慎重に登っていく。すると上の方から「ナンマイダ、ナンマイダ、....」と復唱の声が。見上げると石鎚講信者が鎖を伝わって下りてきている。急斜面の途中で、木の枝につかまりながら道を譲り、頭上に小石でも撒き散らしては大変だと、登り終えるのを見届けてから登りを再開する。あと山頂までもう一息の、最後の鎖のところからは南に巻いて登山道を行く。非常に切り立ったところに続く細道なので、何となくおっかない気がしたが、すぐに山頂に着いた。10:41、子持権現山頂(1709.7m)着。

 未だ霧が晴れず、山頂からの眺めは楽しめなかった。仕方無いので、やや西に下ったところにある子持権現を見に行く。岩屋に祠が設けられており、白煙をたなびかせている。何となく四国八十八ヶ所霊場・岩屋寺を彷彿させる。

 10:46、子持権現を後にして下山に移る。下りも元来た道を引き返すことにする。鎖のところは、若干靴底が擦り減っていて滑りやすくなっているので、より慎重に下りていく。やっとの思いで下り終えると、先程腰を下ろしていた老婆が「ありゃぁ、あんた早かったねぇ」と声を掛けてくれた。「いやぁ、思ったよりも大変でしたね..」と一声かけて通り抜けていく。本当に思ったよりもきつかった。登山口の所で一息つき、11:02、駐車した場所まで戻ったときには息があがる思いだった。

 息を整えてから、再び車を走らせる。11:24、シラザ峠最寄りにある伊吹山登山口の脇に車を停めて、登山開始する。思ったよりも爽快な道だ。辺りを取り囲むブナ林は何とも美しい。林道沿いに続く自然林の登山路を進んでいくと、山頂直下からの登山路と合流する。ハイキングに訪れた婆ちゃん、奥さん、子供2人の4人組がそこから登って来ている。ここからは笹原の軟斜面。あっという間に伊吹山山頂(1502.8m)に着く。到着時刻は11:42。

 朝早く出発したので相当腹も減っており、頃合いも良いいので早速食事の支度に移る。メニューはいつもと相も変わらずラーメン。瓶壷で汲んだ水で作ったというだけで高々80円のラーメンにも高級感を感じてしまう。

 空腹を補った後、ゆっくりと山頂での時間を過ごす。
 伊吹山の山頂は思ったよりも広々とした笹原が広がっていた。そして、西から南にかけての岩黒山−筒上山−手箱山、本川村の大森山(1141.1)、東方面の瓶ヶ森〜伊予富士など広範に眺望が利く場所であった。しかし、天気が余り良くないせいもあって、見通しが今いちであったのが残念だ。このような絶好の場所に20分足らずで辿り着けるというのも珍しいのではなかろうか。是非、もう一度晴れ渡った日に訪れてみたいと思ってしまう。

 山頂での一時を終え、12:40、下山に移る。下りはスッスッと軽快に足が運ぶのだが、余り早く下り過ぎても勿体無い気がし、ブナ林の中では何遍も立ち止まりながら、特にゆっくりと下りていくことにした。深い霧がどこからともなく押し寄せてきて一面を白く包み込む。光を受けて青々とブナ林も良いが、白く霞む幽玄的なブナ林もまた趣があって良いものだ。本当に時間を忘れてしまいそうになる。

 12:58、駐車した場所に戻ってきた。今日はこのくらいにして、家路につこう。

 土小屋は相変わらず車と人で溢れている。折角来たのだから土産でも買って帰ろうと難儀しながら車を停めれる場所を探す。スカイラインをだいぶん下ったところで車を停めて、石鎚の姿を眺めながら遊歩道を歩く。曇り空ではあるが、今日は本当に山の姿がよく見える。

 土産を調達し終えると、あとは真っ直ぐ家に帰ろうと思ったのだが、スカイラインを下る途中、標高1200mの長尾屋根の駐車場に入り、一旦車を降りることにする。眼前に「日本の滝百選」に選ばれている御来光の滝が見える。肉眼でも見えないことはないのだが、滝は遥か向こうにあるため、迫力に欠ける気がして止まない。有料の望遠鏡が2基設置されてはいるものの、100円を突っ込む気にはなれなかった。滝までの散策路がここから続いているようであるが、一旦谷まで下りてから再び登っていかねばならないようで、一日仕事になりそうなので思い止まることにした。

 今度こそ寄り道せずに帰ろう...と思いながらスカイラインを下っていたら、猛烈な雨が空から落ちてきた。面河渓入口(関門)で、「時間もまだたっぷりあるし、面河渓散策にしけこもうか」と色気も出掛かったものの、こんな強い雨では楽しむこともままならない。予定通り、しぶしぶ帰路につくことにした。

 帰りがけ、もみじ街道を通り抜けたところで雨があがった。折角なので、目に留まった村の鎮守でも眺めていくことにする。途中、八幡神社に立ち寄ったが、特筆すべきものはなかった。残念。



 振り返ってみると今日は何ともバラエティに富んだ登山であった。たった半日の間に「広大な笹原」「霊峰での儀式」「岩峰でのロッククライミング気分」「ブナの自然林」...とあらゆる要素に巡り合うことができたのだから。


【同行者】なし
【コースタイム】
[往路]瓶ヶ森駐車場−(15分)−瓶壷−(15分)−瓶ヶ森ヒュッテ−(20分)−瓶ヶ森(女山)山頂
[復路]瓶ヶ森(女山)山頂−(10分)−男山−(10分)−瓶ヶ森駐車場
[往路]子持権現山登山口上部展望所−(3分)−登山口−(15分)−子持権現山山頂
[復路]子持権現山山頂−(1分)−子持権現−(11分)−登山口−(5分)−子持権現山登山口上部展望所
[往路]伊吹山登山口−(15分)−山頂直下登山口−(3分)−伊吹山山頂
[復路]伊吹山山頂−(18分)−伊吹山登山口
 

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