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こたろう博物学研究所
探訪記録:20000506

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笹ヶ森・チチ山・沓掛山(新居浜市/西条市/高知県本川村)登山【平成12年(2000)5月6日】


 08:00、松山を出発。県道伊予川内線を東進後、国道11号線に合流。ゴールデンウィーク中なのでUターンの車で混雑するかと思ったが、至って順調に車は流れている。
 丹原町のコンビニで食材調達後、西条市加茂大橋のところで右折し、国道194号線を南進する。風透トンネルを抜けるとそこは止呂峡。渓谷美に富むところだ。時刻は9:00ちょい過ぎ。ここで左折し、登山口へと向かう幅狭い林道を進む。途中から未舗装の悪路となる。クソボロの我が愛車の足元(タイヤ)は弱体化しているので、パ
ンクでもしやしないかと冷や冷やしながら進むのだが、行けども行けどもなかなか登山口に辿り着かない。
 林道を走って約30分、路傍に車を止めて登山準備に移っている人の姿がちらほらと見えはじめた。更に先へ進もうとすると、「愛媛大学ワンダーフォーゲル部」と刺繍されたジャージを羽織った若者が、「この上にはもう車は置けませんよ」と教えてくれたので、車をUターンさせ、手近なところにある路傍に車を停める。荷物を下ろ
し、早速登山に移る。

 100mほど歩くと登山口に着いた。なるほど、登山口下の駐車場には想像以上の車が止まっており、相当の登山者がいることを伺わせる。どうも年齢層から察するに、その大半は愛媛大学の面々のようである。その人の群れの間を「おはようございます」と挨拶を交わしながらすり抜けた後、まずは沢に架かる小橋の上から渓流の景観を楽
しむ。所々ではあるが、初夏の象徴とも言えるツツジが岩肌を薄くピンク色に染めている。さぁ、一息をついたところで出発だ。
 時間は丁度09:30。沢の左側に続く登山道をゆっくりと登っていく。ややきついかなと感じるくらいの勾配ではあるが、そう苦にはならない。右手には沢が並行して流れ、時折小瀑が元気そうな水音を響かせる。

 景色を楽しみながらゆっくりと登っていったつもりだが、何人かの登山者を追い抜くペースになった。挨拶を交わす度、「さすが若いもんには勝てませんなぁ」の声が返って来る。自分は然程若くもないのであるが。それよりもどう見ても60歳前後に見える人が元気そうに登っていくほうが驚いてしまう。

 10:05、涼しそうな檜の木立の中で、林業の仕事で上ってきたおじさん3人組が腰を下ろして一息ついている。丸太が横たわっていて丁度いい塩梅のベンチになっている。まだ、疲れは然程感じてはいなかったが、歩き始めて30分強で休憩するには頃合いが良い。僕も腰を下ろして一服することにした。
 「登山口から何分で来たんかのぅ」
と人なつっこそうなおじさんが声を掛けてくるので、「30分少し」と応えると、「そりゃ、早いのぅ。ワシら、なんぼ頑張っても40分はかかるが...」とびっくりした様子。自分としてはゆっくり登ったつもりなのだが。

 やがて先程追い越した一行が次々と通り過ぎていく。
 「お早いですね」
 一番最初に追い越した女性二人連れにも追いつかれてしまった。まるでウサギとカメ状態で、自分が何となく怠慢し続けるウサギのような感じである。
 「お疲れさまです」
と一声掛けて、先に出発しようとしたが、折角なので色々と話をする。
 「ここが宿で、昔はここで炭を焼いていたそうよ。ほら石垣もしっかりと残ってるでしょ。それで、ここで焼いた炭は西山越えで別子銅山まで運んだんだって。昔の人ってほんと偉いよねぇ」
と、この場所の謂れを教えてくれた。流石、何度か笹ヶ峰に登っているというだけあって、勘所の情報を抑えておいでる。

 あんまり休んでばかりもいられない。一声かけてからゆっくりと歩き始める。間もなくブナ林へと入る。木々が何とも言えぬ美しい色合いを呈している。気分良く足を運んでいける。休憩の間に追い越した人達を再度追い越していく。
 しばらく歩いていくと、道の両脇に黄色の小花をつけた木が群生している。「これがダケカンバか...」確かガイドブックにそう書いていたはずだ。初めて見る木、そして花である。何かしら一種の感動を覚える。
 ダケカンバの花に酔いしれていたら、気付かぬ間に前方に笹ヶ峰が悠然と座っていた。そしてすぐ先には丸山荘が待ち構えていた。

 10:35、丸山荘に着くと、親子連れらしき軽装の二人連れがベンチに腰掛けて休息している。
 「こんにちわ」
 「やぁお疲れさんで」
 「いやいや、なかなか距離がありますねぇ....」
と早速、会話する。
 「どちらから来なさった?」
 「松山からですよ。お宅はどちらです?」
 「高知よ」
 「高知ですか?えらい遠方から来られたんですねぇ」
 「なぁに、高知から一時間ちょっとじゃき、そがい遠いこともないわい」
 そういや、寒風山トンネルが開通したから、高知からのアクセスもそう難儀なことではないのだ。それでも、つい「高知から」と聞くと、遠路遥遥という感覚に襲われてしまう。

 談話していると、どこからともなく黒い長毛の犬が近くに寄ってきた。動物好きの僕にとってはたまらない。首輪を見ると、「丸山荘のクロです」と書いてある。やたら人慣れしていて、頭をなでてやると、足元に擦り寄り、匂いをクンクンと嗅ぎながら甘えた仕種を見せる。実に可愛い。

 ベンチに腰掛けてしばしクロを可愛がっていた。突如ピクッと動いたと思うとクロは先程僕が登ってきた登山道の方へ向けて走って行く。「元気やったか、クロ」という声が近付いてくる。来る時に追い越した人達をクロは出迎えに行ったのだ。その人達は何度かここを訪れているようで、犬もちゃんと覚えているようだ。

 あんまり居心地が良いので、15分ばかし休んでしまった。今回の登山は休んでばかりだなぁと反省しつつ、腰を上げて再度登りに移る。丸山荘よりも少し上に登ったところにキャンブ場が開けている。それよりも更に少し上は、ブナ、ナラ等の落葉樹の混成林となっている。涼し気な空間で、まさにキャンプにはもってこいの場所だ。
 林の中をしばらく歩いて行くと、突如笹原が眼前に広がる。笹ヶ峰という名前通り、ここから先は笹が広々と山肌を埋め尽くしている。振り返ると北側に沓掛山が見える。景色もよく、然程疲れは感じない。
 やがて寒風山・瓶ヶ森からの尾根道と合流。そこから少し登ったところが笹ヶ峰山頂である。11:35、山頂到着。西には石鎚連山がはっきりと見える。寒風山・伊予富士・東黒森・西黒森・瓶ヶ森・子持権現・石鎚山・岩黒山・筒上山・手箱山...名だたる山が広がっている。東に目をやると、尾根続きでチチ山、冠山、平家平と見渡せる。そしてやや北寄りには赤石山系も確認できる。さすが日本二百名山に選定されているだけあって、360度のパノラマの風景は絶品である。これほど、多くの著名な山を眺めることができる山も珍しい。

 三角点近傍には石積みの祠があり、石鎚大権現を祀ってある。記念写真をセルフタイマーで撮った後、しばらく景色に見入ってしまう。
 11:50、昼食にはまだちょっと早いのでチチ山を目指すことにする。尾根道を東に進み、一旦鞍部へと下る。鞍部にはシコクシラベの林が広がっている。残雪もちらほらと残っている。冠山方面へのトラバース路との分岐に差し掛かり、ここで「→チチ山」と記された標識に従い、尾根道へと分かれる。遠目で見たときには、「これは岩場登りもやむなしか...」と思ったが、あながちそうでもない。チチ山までは比較的快適な道が続いている。笹ヶ峰から約30分でチチ山山頂に到着した。山頂は岩場となっていて、然程広くはない。岩の上には、笹ヶ峰同様、石鎚大権現の祠が据えられている。
 昼食を摂るような雰囲気でもないので、すぐさま折り返して笹ヶ峰へと向かう。12:55、笹ヶ峰に再び到着。来る時に追い越した5人が纏まって弁当を広げてくつろいでいる。そうか、複数のグループと思っていたら、皆一緒のグループだったんだ。そんなことを考えていたら、「お疲れでした」と声を掛けてきてくれる。
 「いやぁ、チチ山往復してたら、やっぱ1時間近くはかかりますねぇ」
 「おたく、歩くの早いねぇ。私ら山頂に着いたら、チチ山のとこ歩いている姿が見えたんで、感心しとったんですよ」
 実に気さくな人達で、しばし話込んでしまう。しかし、時間は13:00。腹が減って仕方が無いので、「それじゃ遅まきながら昼飯を食うことにします」とその場を後にして、山頂のやや西寄りの所で荷物を降ろしてラーメン作りを始める。

 いつもの如く、ラーメン+ビールで山頂の一時を過ごす。その間も、次々と登山者が山頂へと到達する。今日はゴールデンウィークの終盤。笹ヶ峰は大盛況だ。おやっと思ったらクロまで山頂に来ているではないか。誰か登山者についてきたと見える。それにしても活動範囲の広い犬だ。

 13:20頃、先程の5人組が「お先に...」と声を掛けて来て、下山に移った。僕も今日の目標である沓掛山登山も完遂しなければならない。休憩時間はやや短いが、13:30に下山に向かうことにした。下山途中でも次々と登山者に出会う。よれよれになりながら「あと何分ぐらいですか...」と声を絞り出す人も多い。その度に「あとxx分ぐらいですよ。頑張ってくださいね」と激励する。中には小学生や4歳の子供までが笹ヶ峰を目指して登っているではないか。弱音も吐かず一生懸命登っている姿を見ると何ともいじらしいではないか。登ってくる人に道をゆずりゆずりスローペースで降りて行く。途中、5人組のうち、女性3人・男性1人を追い越す。

 13:55、丸山荘に到着。流石に5人組のうちの40歳半ばと思えるお兄さんは既に丸山荘に到着していた。丸山荘のおばちゃん(伊藤さん)との話にふけっている。来る時に見掛けた愛媛大学ワンゲル部の一行約20人も次々と到着し、キャンプ設営の準備に取り掛かっている。
 10分弱休んだ後、沓掛山へと向かうため腰を上げる。まずは丸山荘のおばちゃんに、道の状態などを確認する。
 「ここから50分ぐらいかなぁ。道はちゃんと刈り込んどるよ。この先の三本別れのとこの真ん中をずっといったら宿への分岐があるけん、そこから右に入っていきなさいや。以前はそない言うても真っ直ぐ行ってしもうた人もおったが...」と屈託の無い笑顔で説明してくれる。

 「それじゃそろそろ行くことにします」と一声掛けて、教えてもらった通りに三本別れの真ん中の山道を進んでいく。やがて辺り一帯はブナ等の落葉樹林へと変わる。石墨山も丸山荘上部も良かったが、ここも全くいい雰囲気を醸し出している。行き交う人が少ないのが勿体無いくらいだ。
 14:18、宿へと降りる分岐路に到着。14:32、落葉樹林と笹原の境界へと辿り着く。さあ、あと一息と一休みしてから笹原を登りはじめる。ここからはステッキが威力を発揮しそうだなぁ....と考え、自分の手元を見ると「ステッキが無い!」どうやら丸山荘に置き忘れてきたようだ。取りに戻ろうかとも思ったが、沓掛山の裾まで折角来たのに引き返してしまうと、気力が萎えてしまいそうだ。取り敢えず沓掛山に登ろう。その後、丸山荘まで取りに帰ればいい...と自分に言い聞かせる。
 結構、思ったよりキツイ。足がガクガクしそうになってくる。今日は殆ど歩きづめである。気力だけは残っているものの、足腰は結構堪えているようだ。それでも、何とか気力を振り絞って、笹原の中を登って行く。14:58、沓掛山山頂に到着。標高1691m。なかなかの高峰である。山頂はやや狭目ではあるが、20人はゆうにくつろげるだけのスペースがある。ここからの南方の眺めは素晴らしい。名山である笹ヶ峰の全容を眺められる場所はここを置いて他には無い。そう考えると、訪れる人が少ないのは非常に勿体無い気がする。「名山だけが名山ではない。名山の横に名山はある」などと格言めいた言葉が頭の中に渦巻く。実にここは隠れた名山である。
 
 15:08、余り帰りが遅くなってもいけない。今から丸山荘までステッキを取りにいかねばならないし。ということで山頂滞在時間は10分ばかりではあったが、そそくさと下山に移る。

 さすがに下山は楽で早い。登りであれほどしんどい思いをしたのが嘘のようだ。15:25、宿分岐へ到着。ここから丸山荘までは若干の登り勾配だが、足腰に堪えるほどではない。順調に進み、15:45、丸山荘に到着。庭先でたむろしている女子大生に「この辺でステッキを見なんだですか...」と尋ねるが、快い回答は無い。仕方無いので、丸山荘の中に入って「すんませーん」とおばちゃんを大声で呼ぶ。やがておばちゃんが顔を出す。
 「すんません。さっき、沓掛山への道を尋ねた者ですけど、ステッキを置き忘れていませんかね」
 「ああ、ちゃんとのけとるよ。男の人が忘れとる言うで教えてくれたんで、シラベの白骨のとこまで追い掛けたんじゃがもう先へ進んで姿が見えんようになっとったんで、ほれ、こんな風に荷札に日付書いてしもうとったんっじゃ」
と物置の中から僕のステッキを取り出してくれた。男の人とは5人組の40歳半ばのお兄さん。本当に縁深いもんだなぁと感心・感謝してしまう。おばちゃんも僕を追い掛けてくれたようで、本当に有り難い限りである。
 「まぁこれに懲りんとまた来てくださいよ」
 有り難い言葉である。山も素晴らしければ、人も素晴らしい。本当にここへ来て良かったと思った。そんな感動を覚えながら、15:42、丸山荘を後にして下山に移る。

 16:25、登山口に到着。本当に充実した一日だった。

 と、本当はここで終わる予定だったのだが、オマケが着いていた。登山口に到着すると、登りで出会った林業のおじさん3人が困った顔して「あんたが最後かな」と声を掛けてくる。そういや、他に降りてくる人の姿も見なかったし、ましてやこんな時間だから、僕が最後と言っても間違いはなさそうだ。
 「そうです。他にも愛大の学生さんが居ましたけど、丸山荘あたりでキャンプするみたいですよ」
と答えると、
 「何ぃ!泊るとなっ!.....ほれ、ここに車停めとるじゃろ。じゃけん、林道の上に停めとったワシらの車が出せんのじゃが...」
 橋の上部で鎖を張って通行禁止措置をしていたのだが、その鎖の前に車を停めていて、おじさんたちの車が出せなくしているのだ。困った。相談の末、テコの原理で人力で車を移動させようということになったのだが、大人4人ではちょっと厳しい。こちとら登山疲れで余りパワーも残っていない。さてどうしたものか....。と、丁度そこへ2台のバスが到着する。そして、若々しい学生さんが次々と車から降りてくる。高知県の追手門高校の山岳部の面々が、丸山荘泊の予定でやってきた。何という偶然というか、願っても無いタイミングである。林業のおじさんは既に僕を一味に加え、勝手に交渉役扱いにしている。
 「あの若者らに車を動かすよう頼んでみてや」
そんなこと自分で言えばいいのにと思いながらも、乗りかかった船である。登山準備のため車から荷物を降ろしているご一行様に事情を説明すると、20歳後半と思われる若い先生が、「おい、お前ら、ちょっと手伝え!」と号令をかけ、馬力のある学生達を動員してくれる。
 10数人かかれば、重たい車も移動できるものである。なんとか端のほうまで寄せて、林業おじさんの車を出すスペースを空けることができた。良かった良かった.....と思っていると、おじさん達は礼もそこそこにさっさと車に乗り込んで去ってしまった。おいおい、俺達の苦労って一体何だったんだよ!と一瞬呆れかえってしまったが、立つ鳥跡を濁さず。追手門高校御一行に対し、おじさん達の代わりに「本当に御世話になりました」と一礼して、自分の車へと歩く。

 ま、色んな出合いが生まれたと思えば、これもまたよかろう。本当に今日は波瀾に富んだ登山であった。



【同行者】なし
【コースタイム】
[往路1]登山口→(35分)→宿→(30分)→丸山荘→(50分)→笹ヶ峰→(30分)→チチ山
[往路2]チチ山→(30分)→笹ヶ峰→(30分)→丸山荘→(15分)→分岐→(40分)→沓掛山
[復路]沓掛山→(20分)→分岐→(15分)→丸山荘→(15分)→宿→(25分)→登山口
 

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